「加速する時の中へ」





ここは広大なるアハーン大陸。
荒野にはモンスターが徘徊し人里はなれた森には前文明の遺産が眠る。

この大陸には、絶大なる力を秘めた石・・・聖刻石が存在する。
人々は聖刻の力を借り、白く熱い蒸気を呼吸しながら巨大な鋼の鎧をまとい
人の数倍にも及ぶ剣をかかげ持ち千人の兵士にも劣らぬ力をふるう鉄の巨人兵「繰兵」を操った。
また、天を裂き地を砕く、奇跡を操る秘儀もまた聖刻の力である。




大陸西方ダカイト・ラズマ帝国

闇、まるでなにも存在しないかのような闇。
そこに様々な色彩の法衣を着た老人たちが闇に浮かびあがる。
しゃがれたそれでいて芯の強そうな声が聞こえる。
白い法衣の男の声のようだ。
「まだなのか。まだ手に入れられんのか。」
誰ということもなくそれに答える。
「それが・・・いままでも数人送ったんじゃがな。なかなか見つからん。」
「やはり我々が手をくださねばならないのか。」
灰色の法衣の男がゆっくりと口を開く。
「では、私が行くとしよう。」
白い法衣の男が答える。
「そうか、サキエル。頼んだぞ。」
そして、再び闇へと戻る。


大陸西方デル地方サーク国

ルーハス征服海に面しているため漁業によって栄えており、
そのため内陸部への交通手段が発達し、南テーラタイン諸国を通り北テーラタイン諸国へと続く街道が造られている。

サーク国王都フレイル市街

ここは繁華街、色々な人々が往来している。
冒険者、商人、市民などだ。
僕、碇シンジも冒険者まがいのことをして生活している。
父さんは、六ヵ月前に誰かに殺された。
母さんのことは良く覚えてない。
僕が物心ついたときにはもういなかった。
今僕は、父さんを殺した奴を探して旅をしている。
何故父さんが殺されたのかもわからない。
唯一分かってることは父さんが死ぬまぎわに託したこの大剣がなにか関わってるんじゃないかってことだ。

「はぁ、いつになったら父さんにあえるんだ。」

今日何回目かというため息をつく。

「お腹すいたなぁ。」

実はもう昼なんだけど昨日からまだ何も食べていない。
普通一日に二食食べるのが常識だ。
とりあえず僕は手ごろな食堂を見つけ入った。

「ああ。食べた食べた。もう食べられないよ。」

お腹がいっぱいになるまで食べた僕は会計をしてもらおうと立ち上がった。

「全部で1ゴルダ銀貨になります。」

「けっこうするなぁ。え〜と、財布財布・・・・・・・・あれっ・・・・・・な、な、ないぃぃぃぃ!!
財布がないぃ!!」

僕が腰に巻いている小物入れに入っているはずの財布がなかった。
どうやら、さっきの繁華街ですられてしまったみたいだ。

「お客さん、ただ食いですか。さっきからずいぶん食べてるから気になってたんですけどね。
こりゃもう警備隊につきだしますからね。」

食堂の店員がいまにも怒りだしそうな声でいう。
いや、もう怒ってるかも知れない。

僕は必死になって弁解するけどふだんでも口下手なのにが混乱した状況でまともにはなせるはずもなく
全く意味不明なことを口走ってしまった。

「こっこれはさっき財布がぶつかって男がとられて、そっそんな気はなかったんです。許して下さいぃ。」

「だれか、警備隊呼んできてくれ。」

無情にも定員は告げる。

いつのまにかあたりにはもう野次馬でいっぱいになっていた。
こんなところで警備隊に捕まってしまったらもう仇探しどころではなくなってしまう。

「何でもしますから、それだけは許して下さいぃぃ。」

そのとき、野次馬の中から黒い鎧を着た少年が出てきた。

「オマエ、傭兵なんか?」

『へっ』

横からいきなり話し掛けられて僕と店員は呆然としてしまった。

その少年は頭をかきながら

「せやから、オマエは傭兵なんか?」

「・・・・・一応そんなようなものだけど。」

質問を理解するのに少し時間がかかった。
彼は少し考えると

「じゃあ、ワシが肩代わりしたるからちょっとつき合えや。」

ツキアエヤ?つき合え?・・・・・つき合う!!
そんな、僕はそんな趣味はないのに・・・・
錯乱状態の僕は「傭兵か?」と聞かれたことなどすっかり忘れていた。

「確か、1ゴルダ銀貨やったな。」

そういって彼は銀貨を無造作にテーブルの上におき僕に告げる。

「じゃあ、いくで。」

「ううっ。そんな趣味なんてないのに・・・・・」

仕方なく僕は彼についていくことにした。
勘違いしてるままで。



次回予告

時は急激に加速する・・・・

もう誰も止めることはできない・・・・

第弐話「力なき者の宿命」
続く