「力なき者の宿命」


「あのぉ、どこに行くんですか?」

僕は前を歩く少年に尋ねた。

「そうか、まだゆうてなかったな。」

そお言って、指でさす。

「あそこや。」

あそこって・・・・お城じゃないか!!なんでお城なんかにつれてかれるんだ?
もしかして・・・変な趣味の国王に慰みものに・・・・・

「おい、名前は?」

危ない妄想を広げていた僕は
彼の言葉で我にかえった。

「な、名前ですか?シンジ・・・碇シンジです。」

「イカリ・・・・・どこかで聞いたような・・・・・」

彼は僕の名前を聞くと少し考え込んだようだった。
僕もとりあえずさっきから気になってたことを聞いた。

「君の名前はなんて言うの?」

「ああ、ワシか。ワシは鈴原トウジや。トウジって呼んでくれや。」

鈴原トウジか・・・・・なんでこんなに馴れ馴れしいんだろう。
まだ出会ったばかりなのに・・・
まだもうひとつあった・・・・今一番僕が知りたいことが。

「それでさ、トウジ君。なんでお城なんかに行くの?」

それを聞いたトウジはむっとしたようだった。

「トウジや!!君なんてつけんといてくれ。」

なんでそんなに細かいことを気にするんだろう。
そう思ったけどいちおう従った。

「じゃあ、トウジ。なんで僕をお城に連れてくの?」

「オマエ、冒険者やろ。最近近くの森になモンスターが集まってな、たびたび人が襲われるらしいんや。
せやからワシらが討伐することになってな。」

「だからなんで僕なんかを?」

「そうやなぁ、オマエから他の奴からは感じられんオーラみたいなものが感じられたんや。」

トウジは笑いながら言った。

「ははは・・・はぁ」

僕は苦笑するしかなかった。
オーラってなんだよオーラって。
助けてもらったのは感謝するけどめんどうなことに巻き込まれたくないなぁ。

8分の1刻ほど歩いて僕らは城門まで来た。
見張りの兵が立っていたが別に止められるでもなく通り過ぎた。

城内に入り何度か角をまがったところで法衣を着た少女に急に声をかけられた。

「こらぁ〜!!鈴原ァ!!いったいどこをほっつき歩いてたのよ!!討伐は明日なのよ!!
この忙しいときに。さっさと来なさい。」

その少女はトウジの耳を引っ張ってどこかにつれて連れていこうとしている。
僕にはすごく仲がいい様に見えた。

「いててて。ちょ、いいんちょ、ちょっと待ってえな。」

「なによ。ん、あなたは?」
いいんちょと呼ばれた少女はそのとき初めて僕の存在に気付いたようだ。

「あの、碇シンジです。」

「・・・・鈴原。彼とはいったいどういう関係なの?」

トウジはそれを聞いて焦ったように言った。

「な、何いってんや。新入りや新入り。明日のモンスター討伐に連れてこうと思てな。」

「そっ、そうよね。私は洞木ヒカリ。よろしくね。碇君。」

僕は話の展開についていけなかった。

「はぁ、よろしく。」

ヒカリはトウジにいろいろ文句をいっている。
トウジはヒカリに頭が上がらないみたいだ。

「じゃぁシンジ君、付いてきて。もう一人のメンバーを紹介するわ。」

少し歩いたところの部屋に入った。
そこには眼鏡をかけて迷彩色の服を着た少年がいた。
その少年は僕に気付いて

「ん、誰だよ。そいつ。」

「ああ、明日連れてこうと思てな。」

「ふ〜ん。腕のほうはどうなんだ?」

腕?よーするに強いかってことか。
あんまり、得意じゃないんだけどなぁ。
モンスター相手ならまぁまぁだと思うけど。
人相手には戦ったことないし。
でも、人間とは戦いたくない・・・・・
人を殺すなんて僕にはできないしやりたくもない。


「いや、まだ見てへん。・・・・・そうやな。見とったほうがええか。」

「えっ!!ど、どうやって。」
 
トウジは顎に手を当てて考えている。

「そうだな。トウジ、相手をしてやれよ。」

「つーと、剣術やな。」

「もう。怪我をしない程度にやるのよ。」

それを聞いて僕は焦った。
別に僕は誰かから習ったわけではなく、
単に生き延びるために独学でやってきたものだ。
そんなお城で雇われてるトウジなんかに
勝てるわけがない。

「そんな、剣術だなんてできないよ。」

「やるなら広場でやろうぜ。」

そういってケンスケ達は歩いていってしまった。

「そんな・・・なんで勝手に話が進んでいくんだよ・・・」
僕は仕方なくケンスケ達についていった。
広場は城の中央に位置していて、剣術の練習をしている兵士達が
ちらほらと見える。

トウジは広場の真ん中にたって剣をふっている。

「それじゃ、さっそくやろうや。ちゃんと寸止めするさかい心配すんな。」

僕も背中に背負っている剣を抜く。

トウジの剣と比べると明らかにシンジの剣のほうが長く、厚いことがわかる。

なんでこんなとこでこんなことしてるんだろう。
財布さえすられなかったらこんなことにはならなかったのに・・・・全部スリのせいだ。
そんなことを考えていたらトウジが打ち込んできた。

「おんどりゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「うわっ!!」

ブン!

カキィィィン!!

なんとか弾いたががさらに剣を打ち込んでくる。

「くっ。」

はっきりいって力の差は歴然だった。
シンジは受けることで精一杯だ。

キィン!

キィン!

「だめだ・・・このままじゃ負ける。」

徐々に押されていくシンジ。

「やるねぇあいつ。トウジ相手にあそこまでやるなんてさ。」

ケンスケは隣で見ていたヒカリに話し掛ける。

「そうね。鈴原ってあれでいてけっこう強いのよね。それに優しいし・・・・・」

「そこに惹かれたってわけか。」

ケンスケの言葉でヒカリは一瞬で顔を真っ赤に染めた。

「もう、なにいってるのよ。」

のんきなものである。

一方シンジは・・・

キィィン!!
キィン!

「ひぃぃぃ。」

まだ続いていた。
トウジが切り込んだ剣をシンジが受ける。
ずっとその状態が続いた。
が、その均衡はシンジの一瞬の隙によって終わりを告げようとしていた。

「おりゃぁぁぁ!!」

キィィィィン。

トウジの渾身の一撃よってシンジの剣が弾かれた。

「くっ!!」

なんとか剣を手離さなかったシンジだったがその隙を突いて
トウジが斬り付けてきた。

「もらったぁ!!」

「やっやられる。」

『コロセ・・・・・・・・・』

「頭が・・・・」

『殺せ・・・・・・・』

「なんやとっ!!」

トウジが驚いたのも無理はない。
シンジが常人にはとても無理体制から剣を返してきたのである。

ガキィィィィィン!!!

「お、重い。」

さらに体制を立て直したシンジがトウジに打込む。

ガキィィィィィン!!

「な、なんや。まるでさっきと別人みたいや。」

キィィィン!!

キィィィィン!!

今度はトウジが押されていった。
トウジは受けることしかできなかった。

キィィィン!!

『コワセ・・・・』

『壊せ・・・・・・・』

「・・・・・・・」

シンジは何かに取り付かれたかのように
トウジに向かって剣を振い続ける。
いったい何度、剣を受けたのだろうか。

トウジの剣を握る手に力が入らんくなってきた。
「あかん。手がしびれてきてしもた。」

一瞬、トウジが怯んだ隙をついてシンジの一撃が剣を弾き飛ばした。

ガキィィィィン!!

ブゥンブゥンブゥン
ガラ〜ン

「しもた!!」

「コワセ・・・・コロセ・・・・・・スベテヲ・・・」

ゆっくりと歩んでくるシンジに得物をうしなったトウジは恐怖さえも覚えた。

シンジがとどめをさそうと剣を振り上げたその時、

『ダメよ、シンジ。』

どさっ

「へっ。」

死を覚悟して目をつぶっていたトウジはその音が自分が発した音なのかどうかわからなかった。
おそるおそる、目をあけてみると目の前に気絶したシンジが倒れていた。

「いったい、どーなっとんのや・・・・」





次回予告

街・・・・

人々・・・・

彼はそこで知る。

心というモノの暖かさを・・・・

第三話「心の温もり」