− NO BELiEVE −




第31話  昔の「大好き」



僕は再生ボタンを押すとそのまま床に座り込んだ。

「どんなアンタがうつってるかしらねえ〜♪」
「うう・・・・なんか怖いな・・あ、映った!」


『開南北幼稚園』

「ほらほら!!アンタ覚えてないの!!?開南北幼稚園!!」
「・・・・かいなんきた・・・かいなんきたようちえん・・・?」

モニターの中には確かに僕と思われる幼稚園児と・・・レイカ!!?

(Track01)

『おはよー、れいかー』
『あ、かずきー!』


「!!!!」
「アンタ・・・これ証拠よ」
「うそ・・・」


(Track02)

『えっと・・・・』
『かずきなにしてるの?』
『さんすうのべんきょう、ままにかえるまでにやっとけって・・・』
『え〜、なにそれなにそれ、みせてよ』
『ちょ、ちょっとれいか〜』
(レイカ、カズキのやっていた問題集を取り上げる)
『えっと・・・なにこれ?』
『なんかね、ほうていしきとかいうやつで、Xをもとめればいいんだけど・・・』
『な、なによそれ・・・・なんなの・・・?』


「アンタ!!幼稚園のころから方程式なんてやってたの!?」
「し、知らないよそんなの」
「知らなくてもこれが証明してんのよ!」


『ほら・・・これをこうしてここにもってくれば・・・Xはこれってなるから』
『へぇ・・じゃあこれもここをこうすればできるのかな・・・』
『そうそう!!れいかもできるんだ〜!!』
『かずきにできてあたしにできないわけないわ!』


「すっご〜〜〜〜い!!!アタシもやっぱ天才なんだ〜!!」
「・・・・・(苦笑)」


(Track03)

『つぎはぼくのばんだよー!』
『うるさい!あんたれでぃーふぁーすとしらないの!?』
『かんけいないよそんなのー!』
『うるさい!!』

ぽかっ!!

『うわーん!!』
(先生の登場)
『ほらほら、またけんかしたの??』


・・・・・ふと後ろをふりむいて見るとレイカはベッドの毛布を鼻までかぶせてた。

「ア、アアアンタ!!よ、よくモニタみてなさいよ!!」

半強制的に僕の視線はテレビに戻された。


『またレイカちゃんが泣かしたの?』
『うえ・・・うえ・・・ひっく』


僕はすでに顔全体がこれ以上ないくらいほてってた。
ふとレイカの方を向くとレイカは顔が少し赤いことに気づく。
まぁ・・・レイカほどでは無いと思うけど・・・

「なによ・・・・アンタ赤いわよ、顔」
「レ、レイカだってぇ」
「・・・フフ、となり来なさいよカズキ」
「え?」
「アンタだけ床って言うのもなんかアタシが嫌だから」
「う、うん」

レイカはなにを根拠にいってるかわからなかったが、確かに床にいるのも
少し寒い気がしたのでリモコンを手に取りベッドに上りレイカの隣に移動した。
レイカは少しだけほほえみながら僕の顔の方を見た。

「アンタ、まだ思い出せないの?」
「うん・・・・なんか、他人のを見てるみたい」
「・・・・まあ最後まで見てみないとわからないわよっ!」


『なんで泣かしたのレイカちゃん。楽しく野球やるんじゃなかったの?』
『だってあたしがふぁーすとなのよ!!!』


「!!!!・・・・・・・・」
「・・・どうしたの?カズキ」
「・・・・・えっ?」
「なんか深刻な顔してる、平気?」
「あ、ええ、ハハ、平気平気!」


『こんなんじゃカズキ君レイカちゃんのこと嫌っちゃうぞ〜』
『ふんだ!』
(レイカは先生から目を背ける)
『でも、ぼくはれいかより、ぼくがわるいっておもうから、ぐす』


「アンタ、かわってないわねぇ〜」
「・・・・・(汗)」


『え?なんで?』


「で、『僕がもっとしっかりすればいいんだから』とかなんとか言うのよね〜」
「まさか!?もしこれが僕だったとしてもこれ、幼稚園児だよ!?」
「天才カズキ様がな〜に言ってんのよ!」


『・・・・だって』
『だって?』
『だってぼく、れいかだーいすきだもん!』


「「!!!!!!!!!」」

二人とも目を点にし、固まってしまった。
モニターはなにごとも無いように写し続ける。

『だって、レイカちゃんどうする〜?』
『あたしも、だーいすきだもん!』


「「!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」

「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・お、思い出した・・・・」
「えっ!!?お、おおおおもいだしたの!?」

僕はレイカの方に振り向く。ふと見るとレイカは耳の端まで真っ赤に染まってる。

「うん!!!僕は・・・・僕は確かにこの幼稚園にいた!」
「キャー!!やったじゃないカズキ!!!」

そういうとレイカは僕に抱きついてきた。
すごく嬉そうな笑顔を見せながら、

「じゃあ、じゃあアタシのこと思い出した!?幼稚園のころの!」
「・・・・いつも、野球とかそんなのやってた気がする!」
「キャー本当に思いだした!!!!!」

ちらりと目線をモニターに向ける。幼稚園のころの僕とレイカが仲良く
手を繋いで帰ってる。それがレイカの目線に入ったとたん、レイカは
僕の方に振り向いた。レイカの目線はそのまま僕の目の中に入ってくる。

「ねぇ・・・カズキ・・・・・・」
「なに??」
「・・・アタシ・・・すっごい嬉しいはずなのに・・・カズキの記憶が戻って
すっごい嬉しいはずなのに・・・」

レイカの目から涙があふれ出てくる・・・

「なんかね・・・アタシ達、こんな楽しいことしてて良いのかなって・・・・
やっぱり、やっぱり逃げてるだけなのよね・・・アタシ」

そういうとレイカは僕の胸にうずくまり、泣き始めた。
僕はそっとレイカを抱きしめてやる。やはりさっきまでの僕たちの明るさは
偽物だった・・・僕たちは現実逃避をしていただけだった・・・
実際僕もマサヒロの事からは逃げたくて仕方がなかった。
で逃げていた・・・実際に。それがいけなかったんだな・・・って。
僕もなにかに締め付けられるような感じになり、涙が止めどなくあふれてきた。
僕たちはただ抱擁しあい、大声で泣き合った。もうこれ以上泣けないと
お互い思うまで・・・・

窓の外からは人工的な明かりが何事もないように差し込んできている。
かすかに聞こえる車の音。深夜まで起きてる人たちの明かり。
なんで僕たちはここまで苦しまなければならないのだろう・・・
そう感じてやまないまま、僕たちは自然と泣き疲れて眠りについていた。



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