− NO BELiEVE −




第25話  Death−11



僕達は病院の自動ドアにあたる寸前のところを突っ切った。
もうすぐでマサヒロが死ぬ・・・・それを考えただけでもぞっとする。

「松阪マサヒロはどこだ!!」

マサトが受け付けに向かって叫ぶ。
受け付けの女性はマサトの大きな叫びに驚いたが、感情の無い応答マシンが

「2階のD−10病室です」

と、即座に答える。

「D−10だなっ!」

マサトはそういうとすぐさま階段に突っ走る。
僕達をすぐさまあとを追う。
そのうしろで、受け付けの女性二人のうちの一人がひじをついて
こっそりと漏らしていた。

「あーあ、かわいそーよねー。こんな若いのに死を目の前にするなんてさー」
「D・・・Deathの略だなんて気付かないわよ、普通」

そこに上司かとおもわれる医者がリストを渡す。

「これを・・・」
「はい」

そういって受付嬢の一人が受け取り、そのリストをコンピュータに打ち込む。
そのリストは20分ごとに更新する患者リストであった。

「またDの病室がいるわねー♪」
「今日は多いわねぇ」
「・・・・静谷ユウジ、Dー11・・・と。はい、終了」
「はやいわねー」
「まぁねー☆」


僕達は2階にあがるとすぐさま「D−01〜20」と書いてある
看板の方に走った。そしてD−10のドアの前に立つとすぐさまドアを
ノックもせずに無理矢理に開けた。そこには酸素マスクをつけたマサヒロと、
その横にヒロシとマサヒロの唯一の家族でもある、お姉さんのカホリが座っていた。

「ピ・・・ピ・・・ピ・・・ピ・・・」

まだ脈を打っているんだぞ・・というのを如実にあらわすその音は僕達の背筋を
ゾクゾクッと震わした。

「マサヒロ・・・・」

マサトはマサヒロの顔の横に立って、そう口を開いた・・・
マサヒロはまったくもって返事がない・・・

「マサヒロはもう・・・もう・・・」

カホリさんが口を震わせながら、涙を目にためながらいう・・・
それにつられてレイカも口を押さえながら涙をためる。

「もう・・・だめだって・・・マサヒロ・・・」

もうすでにヒロシは壊れかけてるのがわかった。
目は真っ赤になっており、やることはすべてやり尽くしたという様子だ。

「ふざけるな!!心臓はうごいてんじゃねーか!!」
「・・・脳死・・・」
「の、脳死・・・」

脳死・・・・最近ドナーがどうこうと噂されてたあれか・・・・
実際に僕達の目の前でそれが実在されるなんて・・・・

「ピ・・・・ピ・・・・・ピ・・・・・ピ・・・ピ・・・ピ・・ピ・・・ピ・ピピ」

音が段々不定期になっていくのがわかる・・・・
僕とマサトはゆっくりとマサヒロの右手をとった。

「おい!!マサヒロ!!!!死ぬなーーー!!!」

マサトはそう叫ぶ・・・
だが、音はどんどん激しくなっていく・・・そして


ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!



マサトはそのままひざまつく・・・
僕はそのまま固まる・・・
レイカはただ口を押さえながら涙をこぼす・・・
カホリはヒロシに泣き崩れる・・・
ヒロシはただマサヒロの顔を見ながら固まる・・・

ただ長い長い高い音が部屋いっぱいに反響する。
開けっ放しの壊れたドアの前に先生があらわれる。

「ご臨終です・・・・」

そう口を開くがだれも聞こえておらず、ただただみんな固まってた。
そこにいちはやくレイカが先生の言葉に気付いたのか、
座り込んで声を出して泣きはじめた。

「うう・・・うそ・・・うそ・・・うそでしょ・・・死んじゃうなんて・・・」

その声は音が静まった部屋に一つ響いた。
それと同時に僕もマサトもヒロシもカホリも号泣する・・・
その声は病院一帯に聞こえるくらい大きく叫び、10分間静かになることは
なかった。



泣き付かれるまで泣いた後、僕達4人は病室を後にした。
カホリさんも死亡手続きや脳死手続きなどで、病室から離れた。
僕達はただ操られるかのように無言で病院を出て、いつも僕達が
たまってる学校近くの公園のベンチに座った。
いつもなら5人いるはずのこのベンチに・・・4人だけで座った・・・
無言状態がただただ続く・・・・少し明るめの夕日が僕達を鈍く照らす。

「なぁ・・・・・・教師なんて・・・・大人なんて、信じることできるか?」

始めに口を開いたのはマサトだった。

「・・・・できない・・・」
「・・・アタシも・・・」
「・・・静谷・・・もうぶっころしてやる・・・」

そう言ってヒロシはポケットからバタフライナイフを出す。

「ああ・・・静谷はもう俺が殺った・・・」
「・・・殺ったのか!!!?」
「わからねーがな・・・てゆーかバタナイなんていつの時代?」

みんなほんの少しだけ笑い顔を見せた。だがすぐに元に戻る。
マサトはポケットからマルボロを出し、ジッポを出し火をつける。

「・・・なぁ・・・俺達でこの国のセンコーなんか、大人なんかいらねーって事、
証明してやろうぜ」
「・・・この国の・・・?」

僕が聞き返す。

「日本だよ・・・なにかが狂ってるぜ・・・絶対にな・・・」
「・・・・・」

だれも返事できずにいる・・・

「だから俺達で革命しちまおうぜ。まずうちの学校から全部よぉ・・・」

そういってマサトは自分が一口吸ったマルボロを僕に手渡す。
僕は少し迷いがまだありながらもそれを一口吸い、少々咳き込みながらも
レイカに渡す。レイカはそれを迷わず口に含み、吐きそうになりながらも
ヒロシにまるで汚いもののように差し出す。ヒロシはそれをさっと受け取り、
一口吸ってマサトに返した。それをマサトがもう一回口に含み、地面に落とし、
火を消した。

夕日が僕達をまだ鈍く照らしつづけている。
セミの鳴き声がまだかすかに聞こえる。
僕達はこれからどうなるかなんてだれにもわからない・・・
けど大丈夫だろう・・・なぜかそう思えるようになった・・・



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