− NO BELiEVE −




第19話  夢の操作



ピーーーーーーーー・・・・・・

「・・・・・・サラは・・・只今・・・死亡しました・・・・・」
「そう・・・じゃ、この記録を被験者H−001の夢の中にうめこむわよ。Escarte
Systemをスタンバイさせて。」
「・・・・・」
「どうしたの?スタンバイよ、早くして」
「・・・どうして・・・」
「?」
「・・・・どうして死ぬのがわかってて助けなかったんですか!!」
「カナミ・・・・」
「どうして!!どうしてなにも!!なにも!!」
「これは私達の仕事なの・・・・今更なにを言っても無理なの・・・」
「でも、でも、でも!!」
「サラの命は、絶対に無駄にはしないわ。計画が成功すれば、彼女は生き返るのよ」
「・・・・でも・・・・」
「だから私達が成功させないと、彼女の死は何も生まれないのよ」
「・・・・・」
「わかってちょうだい・・・カナミ・・・・私もこれを見てるのはすごく辛いの・
・・でもこれは人類のためなの。人類の幸せのためなの。計画が実行すればきっと
サラも生き返るはず。だから・・・・わかってちょうだい・・・・」
「・・・・・はい」
「それじゃあ、起動してちょうだい」
「はい・・・Escarte Systemスタンバイ。被験者H−001に埋めこみ開始」
「現在の状態は?」
「睡眠中。これよりレム睡眠維持モードに入ります」
「わかったわ」

ピー!!

「成功しました!」
「夢遊観察モードに変換。モニターに映して」
「了解!」

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

な・・・・こ・・・・ここは???
し、新宿アルタ?
な、何でこんなところに??

あれ・・・僕、浮いてる?
何だろう・・・夢なのかな?
そうだな・・・・夢だよな・・・

「すいませんこんなところで待ち合わせ。それじゃあ面接ありますので、事務所まで」

なんか声が聞こえる。
男が女の子をナンパしてるのかのような雰囲気。
でも女の人はあっさりと男の方についていった。
女の人は・・・・・永山サラ??
すごく似てる・・・でも、人違いか・・・

キィィィィィィン・・・・

え、な、なに??
こ、今度はどこ??
家の・・・リビングみたいな部屋だ。
親と子供一人がソファー座ってる。

「ママ!パパ!アタシ、アイドルになるの!!アイドルになっていろんな人と友達
になるの!!歌とか歌ってCDをだしてテレビとかにでて、他のアイドルと友達に
なるの!」
「サッちゃんなら可愛いからなれるわよ!がんばりなさいよ!!」
「そうか!サチコはアイドルになるかー!そしたらパパやママにも有名人を紹介し
てくれよ!!ハハハハハ」
「うん!アタシ、頑張ってキムタクみたいな有名な人と結婚するから!!」

ある家庭の微笑ましいような状況。
この子、だれなんだろう・・・・
アイドル目指すなんて、可愛いな・・・・

キィィィィィィン・・・・

あれ?ここは・・・スタジオ??
あ、さっきの女の人だ・・・
なんか書類みたいのを書いてる。
永山サラに見れば見るほどよく似てる。
もしかすると本物かな?
そう思ってしまう程よく似ていた。

でも書類には中岸サチコって書いてある。
ちがうか・・・・でも永山サラって芸名・・・だよね?
サチコ・・・・さっきの子供の名前もサチコだったな・・・

彼女は書類を書き終えて、机の上にある紅茶を一口・・・・
あれ・・・・なんか変みたい・・・・
顔が赤くなってきてる・・・・
息が荒くなってきてる・・・・
間違い無い!これ、永山サラだ!
何で・・・こんな夢見るんだ?
さっき抜いたからかな・・・・
でも、なんか違う・・・
夢じゃないような気がする・・・
なんでだろう・・・・

ガチャリという音とともにドアが開いた。
いかにも変態そうな親父とカメラマンが中に入ってきた。
まさか・・・ここで、AV撮影??

「どう?媚薬入りのお茶は」
「あ、嫌!う・・・く・・・」

!!!

・・・・・媚薬・・・入り・・・・
卑怯だ・・・・
卑怯すぎるよ・・・・

サラちゃんは嫌がってるのに・・・・・
男は薬が効いてるサラを脱がして、襲いかかる。
サラは何の抵抗もなく男に抱かれる。

「あ・・・ん・・・くっ・・・・うん・・・・・はぁ・・・・はぁ・・・・
はぁ・・・・はぁ・・・・」

なんか脳裏に悲痛の声が聞こえてくる気がする。
う・・・・ううう・・・・サ、サラちゃん・・・?

「イヤア!!!もう止めて!!!
これ以上アタシを求めないで!!!
これ以上アタシを感じさせないで!!!

アタシにとって初めてのディープキスだった。
愛などひとかけらも感じなかったキスだった。
でも・・・身体は受け付けていた。
心はどこかに・・・なくなってた・・・

変になっちゃう・・・・・お願い・・・・

叫び声を出して、逃げ出したかった。

イヤア!!!アタシに、アタシに触れないで!!!
誰にも、誰にも触らせた事も、見せた事も無いのに!!!

う・・・・嘘・・・・嫌!嫌!嫌!嫌!
言う事聞いて!言う事聞いて!言う事聞いて!言う事きいて!!
お願いだから!!!」

・・・・・・止めろ!!
こいつら!!
止めろ!!!ぶっ殺してやる!!!

でも僕は動く事さえも出来なかった。
これが夢だっていう事はすでに忘れてしまっていた。
僕はこの卑怯な男達を許せなかった。
出来る事なら今すぐ止めたい!!
でも・・・動けない・・!!

う、嘘・・・
男が、男がサラちゃんに入れようとしてる!
う・・・・・・・

・・・・・・
血が出てきてる・・・
処女だったんだ・・・

もう目の焦点が遠くの方にイっちゃってる。
もう・・・壊れてきてるのが、僕の目で見ても明らかになってる。
チクショウ・・・チクショウ・・・チクショウ!!
サラちゃんは嫌がってるのに!サラちゃん自身は嫌がってるのに!!
なんでサラちゃんの身体は、拒絶しないんだ!!?
それよりもなんで僕が動けないんだ!!
チクショウ!!!!


「それじゃあまた、連絡しますんで、今日はもう、休んでください」

すべて終わった後、
サラはスタジオを後にした。
彼女はすでに完全に放心状態に陥っている。

そして近くの公園に吸い込まれるように入り、ベンチに座り、膝を抱え込んだ。
そしてから数秒後、彼女は号泣した。

「うう・・・く、うううう・・・・・・・・・」

そしてそのまま夜は更けていき、朝になってしまった。
ベンチには何も考えられないサラの姿があった・・・・

サラちゃん・・・・これが夢だとわかっていても、
これが現実ではないとおもっていても、
僕は人間に、大人に不信感をまた抱いちゃうよ・・・。
なぜかこの夢はものすごくリアルで、夢だという事を感じさせない・・・・


人はなぜ、ここまで欲望のために突き進むのか・・・・
僕にもわからない。
でも、一つ最近思ってきた事が一つある。
僕達や子供なんかより、大人の方がずっと、ずっと汚いという事に・・・

たしかに僕も自分の欲に突っ走るときはある。
確かに最近は僕達と同じ年齢の子の犯罪事件は頻発してる。
でもそれがなぜ僕達の年齢だというだけでそこまで大きくマスコミに載らなければ
ならないのだろうか?
大人達の方がもっと悪い事をたくさんしているのに。
大人達の方が自分の欲をもっとコントロールできるはずなのに・・・
大人達の方がもっとマスコミに載るような事たくさんしてるはずなのに・・・・

自分の性欲を満たすために・・・・
自分のふところを満たすために・・・・
色々な最低な事をして満たそうとしてる・・・・
確かに東君のように僕達と年は同じくらいなのに自分の欲を満たすためだけのため
に他人を犠牲にしたりとかもするようになってきた。
でもそれは大人達を見本にしてるんじゃないの?
大人達は、東君のそれ、よりも卑怯で汚い事をたくさんやってるんだ。
子供がそれを見てまねをする、それもあたりまえの行動なんだよ。
なのに大人は、あたかも子供だけにすべての責任を負わせようとしている・・・
僕達みたいな中学生や高校生がいかにも悪いように思わせるように言って、大人で
ある自分達を正当化させようとしてるだけなんだ。
最低だね・・・・

確かに大人がみんな悪いわけじゃない。
別にみんなが同意して欲に溺れるのはかまわないとおもう。
でも・・・・大人にとって僕達未成年は大人達から差別される存在になっている・・・
「なんだ!子供のくせに!!」
その言葉、大人に何回も言われた事がある。
第一僕達はもう子供じゃない・・・・
確かに保護者という人物から経済的な助けがなけりゃ生きてはいけないし、
学校にもまだ通わないといけない。
でも、今僕達が習ってる内容を、大人達が果たして覚えているのだろうか?
ほとんどの人は、覚えてはいない。
そんなものは生きてく上で必要無いからだ。
ただ僕達は生きてく上で、将来仕事を探すために、そして何より法律上強制的にし
なければいけない事なのだ。
実際僕なんかはもう大学を卒業し、アメリカに住んでたらもう学校などにはいかなく
てもよく、今ではもう仕事につけるはず。
NASAとかから半分脅迫に近い求人メールが家にも届いた事があった。
でも僕はあえてその道を選ばず、僕と同年代の人達とと一緒に暮らす道を選んだ。
僕は自分でゆっくりと自分の道を見つけたかったのだ。
でもその僕の考えも大人達、とくに母さんは大反対をしていた。

「アンタ何夢見てるのよ!!黙ってアンタは私達の言う通りにしてりゃいいのよ!!」
母さん・・・・僕は、母さんの人形じゃないんだよ・・・・
「いいからお前はNASAに入るんだ!そうしなければ後悔するぞ!」
後悔なんてするもんか。脅迫してるつもりなのか?僕は自分の道を見つけるんだ。
「アンタがいくら頭良くてもねえ、所詮子供なのよ。コ・ド・モ!さっさと名誉あ
る仕事に入りなさいよ!私達大人が言ってんだからさぁ」
子供だからって関係無いじゃないかそんな事。仕事を、いや人生を選ぶ権利は僕に
もあるはずだよ・・・
「私達はあんたのために働いてるんだからね」
じゃあ働かなくていいよ。働かないと僕も困るけどそれよりもあなたが困るだろ。
「〜のために」なんて言い方ですべてが許せるんだったら「アンタのために殺した
んだから」「アンタのために傷つけたんだから」ですべてが許せるのか?ただ自分
を正当化させたいだけだろ。
「何で、嬉しそうな顔してるんだ!」
父さんは、何もわかってなかったじゃないか!!
いつもいつも母さんにすべてを任せっきりで!!!
僕がどれだけ母さんに傷つけられたか知ってんのかよ!!!!
なにも、なにもしてないくせに!!!!!
なにも、なにも知らないくせに!!!!!!
「なんだ!子供のくせに!!」
関係無いじゃないか・・・・・・・・・そんなこと。

今もう僕達は経済的に無理が無けりゃ生きていけるはず・・・
子供の作り方も育てかたもすでに知っている。
生きてく上でなにが必要かというのももうわかっている。
なのに・・・子供だという理由だけで、僕達は大人からイヤな目で見られる。
子供だという理由だけで・・・・・
大人の方がずっと、ずっと汚い存在のはずなのに・・・・・

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

「カズキ君の夢の中のこれ・・・・は、本当に真実・・・なんですか・・・・?」
「Escarte Systemが活動してる中の『夢』の中では嘘は愚か、妄想も許されないわ。
これは紛れもない、彼の思考そのものなのよ・・・・」
「カズキ君・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・・本日の実験は中止。記憶操作を決行」
「記憶喪失・・・ですね。範囲を・・・」
「本日今までの『夢』の記憶をカズキの中からすべて喪失」
「了解」



続きへのリンク、
(注意:まだ出来上がってない時はエラーになるよ。もちろん)
ホームページに戻る


あとがきへのリンク、
nobeliv@nettaxi.com