− NO BELiEVE −





第8話  心の底で



アタシ、カズキ・ファースト。もちろん、カズキの中に入ってる人格の中で一
番優秀な人格よ!セカンド?いま心のなかよ。アタシがアイツを閉じこめたの。
くら〜い心の中にね。
アイツ、ここ半年間ずっとアイツ一人でカズキの主人格になっていたからね、
絶対不公平よ!そう、今までアタシはこの時を待っていた。セカンドが交代したく
なるこの時をね。

”あんまり無茶しないでよ”

「うっさいわねぇ。なんでアタシがアンタの命令なんか聞かなきゃいけないのよ!
死になさいよ!」

”そ、そこまで言わなくても・・・”

「それじゃ!トーブン心の中でアタシの行動を見てなさい!」

まったくセカンドのうるさいところ、何とかして欲しいわね。まったく。



「狭間君。狭間君!」
「ん。あれ、ど、どうしたの?旗本さん?」

これがアタシになってからの初めて聞こえた言葉だった。一応アタシは男言葉で
話すようにする。アタシという人格は女だけど、身体は男だからね・・・

「あーびっくりした!」
「どしてよ?」

あ、やば。まだなれてないわね。結構難しいわ。男言葉って。なんせ半年ぶりだ
からね。

「だって狭間君死んだ様だったんだよ。いきなり!」

アタシが言葉、女っぽかったのぜんぜん気付いてなかったみたい。良かった・・・

「ぼ、僕が死ぬはずないじゃない」
「そ、それもそうね。ごめんなさい」
「謝んなくてもいいって、は、はは・・・」
「うん」

「狭間と旗本!!!大切な話なんだぞ!!ちゃんと聞いとけ!!!」

うっさいわねぇ。静谷の奴。セカンド嫌がるの少しわかる気もするわね。
でもアタシはそんなことあまり気にしない。猿がなに言おうとしょせん
猿は猿、人間には通じないのよ!
そう、アタシは天才なのよ!何をしても絶対にいい結果が来るわ。それがアタシ
だもん。そして静谷みたいなキチガイな変態に何を言われようと馬鹿がわめいて
るみたいな感じでしか取れないわね。馬鹿はしょせんどんなに頑張ろうと馬鹿な
のよ!

「では、次に道徳を始める」

つまんないわね。学活がもう終わっちゃったのかな?
アタシはもうとりあえず寝ることにした。
つまらないから。

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心の中。
久しぶりな気がする。
なんか心地良いようで実は悪いような空気。
ずたずたに破れている壁紙。
かなり暗い。
機嫌が悪いからだ。
気持ちが沈んでるからだ。

倉庫のような感じだ。
汚く、病んでる感じ。
かなり暗く、いやな感じ。

”初めてだな。セカンド”

後ろからいきなり声が聞こえて来た。

「誰!」

僕はとっさに後ろに振り向いた。

”俺はサード”

サード!元々のカズキの主人格だった存在。僕とファーストを作り上げた人格。
僕らにとって謎に満ちた存在。殻に閉じこもってたはず。

”なぜ、俺が殻に閉じこもってないかを、質問したがってるな”

!!

「・・・・・」

僕は何も言わずにコクリとうなずいた。

”俺は、もう一人の俺だからだ”

「・・・はぁ?」

”俺は二重人格の人格なんだ”
「つまり、君はカズキ・サードの中の人格の一人って事か・・・」
”俺含めて二人しかいねえけどな”
「殻に閉じこもってた人格は?」
”さあな”
「さ、さあなってどういう事だよ」
”俺はあいつにはほとんど興味はない。でも俺、いやサードの主人格者はあいつ
だ。あいつが本気で俺を消そうとすれば消す事も出来る。あいつはでも今も殻に
閉じこもったままだ。なぜだかは俺も知らねえがな”
「・・・・そうなの・・・」
”・・・・・・”
「・・・・・・」

沈黙が続く。

人格の中にある人格達。
サード。
僕にとっては謎の多い存在。
この髪の長い女の子のような顔立ちのこの人格。
ファーストはこの人格のの事はすでに知ってたのか?
疑問に思う。

僕はサードから少し遠ざかり、カズキ自身の身体の方に精神を集中させた。
そうすると今カズキ(ファースト)が何をしてるのかがわかるからだ。
そういう事が出来るという事を考えると僕らはまだ多重人格者としては幸せな方
だと思う。違う人格にからだを奪われた時、自然に取り返すまで自分の記憶が全
くない人もいるのだから。心の中に自分がいる事もわからない多重人格者。僕に
とっては悲しい存在他ならないと思う。多重人格にはそれなりの楽しみがあると
僕は思う。寂しさを感じる事が少ない。それが最大の理由だ。

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「zzz・・・・」

寝てるよ、おいおい・・・僕のことファースト何も言えないじゃんか、これじゃ。
やれやれ・・・



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