− NO BELiEVE −




第6話  禁断の恋愛 始発



ガチャ

僕はベッドを下におろした。
ユキちゃんは布団で寝るから、僕もその布団と同じ高さにしたほうが、話しやす
いからだ。本当は今日はもう、何も話したくない。なにもしたくない。ただ全て
を忘れたかった。死という事を。
でもユキちゃんを傷つけたくない。ユキちゃんに不愉快になって欲しくない。だ
から、僕はすべてを忘れるのは明日にする。今日、このことは僕自身の心の奥底
に閉じこめておく事にする。そう決心をした。

ユキの布団をしいた後、ベットの上に僕は倒れた。
少しでも今日の事を思い出すと涙が出てくる。

今ユキちゃんは下で食器を洗ってくれてる。
いつもならほとんどの場合、僕がやる仕事だ。

今、僕は部屋に一人。
この孤独さがきつい。
この食器を洗ってる音がかすかに聞こえるが、静粛を保ってるこの空間がきつい。
この、なにもしたくない気持ちが、辛すぎる。

僕の目から涙が出て来た。
止まれ!止まれ!涙なんか止まれ!
ユキちゃんが僕の部屋に来たらどうするんだ!
ユキちゃんの荷物は全部ここにあるんだ。いつ来てもおかしくない状況だ。
止まれ!止まれ!止まれ!止まれ!
止まってくれぇ!!!!


テレビでも・・・見て、リラックスするか・・・

パチ。

HEY!HEY!HEY!やってる。
ゲストがZARDと河村隆一?
恋愛系ばっかだ・・・なんか嫌だな・・・

ピッ。

「世界丸見え!今週は恋愛特集をお送りしておりまーす!」

パチ。

やめてくれ・・・
また、涙が出て来た。
ちくしょう!何が恋愛だよ!死んじまえ!!

・・・・・死んじゃったんだ・・・・・
・・・・・死んじゃったんだ、カレンは・・・・・

・・・・・しゃれになってないよ・・・・・


・・・・・・・・・・


僕は涙を急いで拭いた!
ユキちゃんが階段を上がる音が聞こえたからだ。


ガチャ


「あれ、カズ君布団しいてくれたんだ。ありがとう」
「うん」
「お風呂、沸いてるけど、入る?」
「いいよ。先に入ってきて」
「そお?じゃあ先に入ってくるね」
「いってらっしゃーい」

ふう・・・・


・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


「カズ君。お風呂上がったよ。あれ、寝ちゃったんだ」

そう、いつの間にか僕は寝てしまってたんだ。

「やだ、カズ君。また泣いてる・・・」

そう言ってユキは僕の涙をティッシュで拭いてくれた。
その時、僕は悪夢にうなされていた。
カレンが死んだという、悪夢に。

ユキは自分の布団に横たわると、「ふう」っと一息ついた。

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

「うわああああああ!!!!」

ガバっと僕は起きた。
叫んだ。

「はあ、はあ、はあ、はあ・・・・・・・・最悪だよ・・・・」

僕は自分の顔を手で押さえ、顔を横に振った。

「ど、どうしたの?」

ユキちゃんがとてつもなくビックリしたように僕の顔をじっと見ていた。

「あ、ユ、ユキちゃん!!」

僕はユキちゃんの存在に気付いた。
だがその時にはもう遅く、夢の恐怖を思い出したのか、涙が出てきてしまった。

「カズ君・・・本当に大丈夫なの?」
「だ、だいじょうぶだって・・・・」

どう見ても大丈夫な状態ではない事が見栄見栄だ。
泣き声になっているのが自分では気付いてる。

「だって・・・泣いてるわよ・・・」
「・・・・・・・」

否定が・・・出来ない・・・
涙が、こぼれ落ちてく・・・

「・・・・何も、力になれないかもしれないけど、ユキに話してみなよ。良かった
らでいいけど。このまま溜めてても、なにもいい事無いよ」
「・・・・・・・・」
「・・・言いたくないのね・・・」
「・・・・・死んだんだ・・・・・」
「えっ・・・・・・・・」
「僕の・・・好きだった人が・・・死んだんだ・・・」
「・・・・・・・・」
「・・・殺されたんだ・・・死んじゃったんだ・・・・」

ユキちゃんが僕に近づいて来た。
僕は目も合わせられなかった。
僕の目から、涙が止めどなくあふれている。

「カズ君・・・・・」

ユキちゃんはそう言って、僕をそのままやさしく抱きしめてくれた・・・

「泣いて・・・いいと思うわ。泣く事は恥ずかしい事じゃ、ないよ」

「う・・う・・・ひっく・・・・う・」

僕は声を殺して泣いた。
ユキちゃんのぬくもりが、僕に触れてた。
ユキちゃんのやさしさが、僕に触れてた。
温かかった。とてつもなく温かかった。
優しい感じが、僕全体に広がっていった・・・・・
やわらかい。温かい。ユキちゃんの良い香りが身体中を駆け巡った。

僕の手も、ユキちゃんの腰に回して、抱きしめながら泣いた。
ユキちゃんのぬくもりをいっそう感じる。
温かかった。ものすごく温かかった。

ユキちゃん・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


15分ぐらいたっただろうか・・・
僕はユキちゃんのぬくもりから、離れた・・・

「もう・・・平気?」
「・・・うん。何とか・・・大丈夫になった」
「・・・・・でも、その傷は、そう簡単には治らないわ。少しずつ、その彼女の事
・・・・忘れろとは言わないけど、考えたりするのはやめた方がいいとおもうわ。
そうやって段々傷を治していきな」
「うん・・・何とか、もう大丈夫。ありがとう」

こうしてその日は終わった。

そして次の日は、前日何事もなかったようにユキとずっと話をしていた。
あの話題は極力避けながら・・・

その次の日。ユキちゃんは帰っていった。


「頑張ってね!カズ君!」


と言い残して・・・



その日の夜。僕はとても変な感じになっていた。

ユキちゃんのぬくもりを・・・思い出してた・・・

「ユキちゃん・・・ユキちゃん・・・ユキちゃん・・・」


僕は気付いた。僕はユキちゃんに特別な感情を抱いてる事に・・・




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