− NO BELiEVE −




第22話  認定のトップ



「3−Aの半数がまだ学校に来てない!!?」

3年の主任、高橋の大声が職員室中に響きわたった。

「え、ええ・・・・とくに北開南地区の生徒は一人も来てません」

静谷が困ったような顔をしながらいう。

「確か君、今後生徒が遅刻するような事があったらその生徒のクラスを降格させる、
みたいな事を言ったらしいね」
「は、はぁ・・・・確かに狭間と朝奈が遅刻したとき、そう言いましたけど・・・」
「・・・・不可能だな。特AとAだからな・・・」
「は、はあ・・・・」

そこで隣の席でたばこを吸ってた河井という人が口出ししてきた。
来期から3−Aの担任となる新任の先生だ。全く教師とは見えないその外見はおそ
ら教師の中でも噂になってる事だろう。だが高橋はこの新任の事を悪く思ってる様
子はまったくないみたいだ。

「それは一体・・・・?」
「河井、お前知らんのか?文部省の特別教育認定というのを・・・・」
「噂には少し・・・・」
「それのランク特AはIQ200を越える超天才児に送られるランクで
それに狭間カズキ、IQ273はもちろんのこと、寺岡サオリの231、
羽柄野マサトの214、旗本ユリコの206、高山ヨシミの208、
布絵ヒロエの212。この6名は文部省が認定した超天才児なのだよ。
ちなみにランクAというのはIQ180を越える天才児のランクで
朝奈レイカの197、松阪マサヒロの196、宮崎タクトの189、
他にもあと7人くらいいる。3−Aに天才のランク、IQ140以下
の生徒など1/3以下だ」
「そんなクラスを・・・・俺に?」
「大丈夫だ。君がそのクラスに全教科教えるわけじゃあないだろ」
「一応・・・日本史を・・・」
「無理はせぬようにな・・・特に狭間カズキは国際的に認められた天才児だからな。
12の時にハーバードを卒業した」
”!!!”「狭間カズキ!?なんかで聞いた事ある・・・・」
「少し前に噂になってたからな。三流週刊誌とかにも載った事もある」
「マジっすか・・・。大学行ってるとかになるともう俺には教えられませんよ・・・」
「ハーバードで日本史勉強すると思うか?」
「・・・・は、はぁ、なるほど。確かに」
「大丈夫だ。あいつは生徒的には悪い生徒ではない。問題は寺岡と羽柄野だ。本来
なら退学当然の処置なのだが・・・・な」
「退学には・・・出来ないんですか?」
「文部省になにを言われるかわかったもんじゃない」

高橋が机の上にある茶をすすりながら言う。

「で、高橋さんどうしましょう・・・・」

河井に僕のクラスの生徒の説明(?)をしてる高橋に静谷が話題を戻した。

「ああ、、、誰が来ていないのかね?」
「狭間、朝奈、羽柄野、寺岡、旗本、松阪、高山、泉、松本、本間、根岸、岸本、
あと3−Bでは布絵、鎌田、坂本、小向がいません」
「北開南の生徒ばかりだな・・・ちょっと見てきてもらえるか?通学路を」
「はい」
「河井先生。あなたも一緒に見てきてくれるか?」
「はい」

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「どーするのよ」
「レスキュー隊に電話してみる」

マッポの横暴なやり方に完全に切れてた僕もようやく落ち着き、レスキュー隊とい
う案が浮かび上がった。僕はレイカのPHSから119番を押し始めた。

プルルルル・・・・プルルルル・・・・ガチャ

「はいもしもし119番です」
「あ、もしもし。こちらカイナンヒル団地よりPHSでかけてるんですけど、あの
ですね、今僕達の足元にあるマンホールの下に犬がいるみたいなんですけどそのマ
ンホールが開かないんですよ。どうかそちらで開けてもらえないでしょうか?」
「は、はぁ・・・・でも原則的に人命救助以外はやっていないんですよ」
「いや、そーいう問題じゃなくて。犬が死にかかってるんですよ。犬の一生が終わ
るかもしれないんですよ。どうか助けられませんかね・・・」
「誠に申し訳ございません。一応規則ですので」
「規則なんか関係無いじゃないですか。一つの命がかかってるんですよ」
「すいません。でもだめなんですよ」
「おかしいじゃないですか。人じゃなかったら助けないなんて」
「申し訳ありません。それは緊急ではないので・・・」
「生き物が死にかかってるのは緊急じゃないんですか?!」
「すみませんが緊急ではない所に当たってみてください」
「ちょ、ちょ・・・・」

プー、プー、プー

「どうだったの?」
「いきなり切られた・・・最悪だ」

僕はもう大人達への怒りが頂点に達しそうな感じがした。

「・・・この電話の奴、緊急じゃない所に当たってみろ、だってさ」
「番号知ってるの?」
「知らない・・・てゆーかどこに当たってみればいいのかもわかんない」
「そうね・・・・」

レイカは僕がかなりイラついてきてるのを察知してるのか、これ以上は口を開かな
かった。僕はもう絶対に助けてやるって決心を固めた。たとえ大人がだれも手助け
しようとは思わなくても・・・・

「おい!」
「ん!?」

後ろからいきなり声をかけられ少しびっくりしながら後ろを振り向いた。声をかけ
た人物はマサトだった。

「マサトー!今までどこ言ってたんだよ」
「バイク処理。マッポは?来んのか?」
「こないよ。少なくとも110と119には断られた。緊急じゃないからだって」
「なんだよそれ〜。バイク隠さなくてよかったじゃねーか」
「ははは・・・まーね」
「・・・それにしても結構集まってるのに何一つ苦情こないのがおかしいよな」

僕はマサトのその言葉を聞いて少し回りを見渡した。本当だ・・・・20人近くの
人、それも僕達と同じ中高生が集まってる。多分遠くから大人が見ると正直言って
かなり嫌なイメージもたれるかもしれない雰囲気だ。

その問題のマンホールでは今も力に自信ありそうな人が開けようとしている。でも
そのマンホールは決して動くそぶりはなく、日光に当たって黒くて鈍い光をギラリ
と反射している。

「さて・・・どーしようか・・・」
「壊すしかねーんじゃない?」
「あ!壊すって方法忘れてたじゃん!そうだよそうだよ!もうこうなったら
壊そうよ!」
「How?」
「・・・・・わからない」

僕はうっすらと苦笑を浮かべていった。

「開連の集会場行けば爆薬あるけどな」
「ば、爆薬?!」
「死になさいよアンタ!」

レイカが突っ込んできた。

「アンタねぇ、マンホール爆発させて犬に当たったらどーすんのよ!」
「大丈夫だ。俺はそんなへまはしねー」
「誰にも失敗って言うもんがあるのよ!」
「大丈夫だっつってんだろ!ただマンホール吹き飛ばせばいいだけなんだからよ」
「ふーん・・・危険物取扱法違反、無免許運転、窃盗、交通法違反・・・」
「だからなんだってんだよ!」
「これこそほんっとーの緊急事態よね〜」

そう言ってレイカはPHSでどこかに掛けようとするふりをする。

「・・・・ほんっとムカツク奴だな・・・・」
「アンタが爆弾を使うとか言うキチガイ的発想言うからいけないんでしょう?」
「この自信過剰なアリジゴクめ・・・」

パッチーン!

マサトの黒い頬に赤い手形がついた。

「どーしてこのアタシが『自信過剰なアリジゴク』なのよ!!」
「男を自分の都合のいいように引きずり込むアリジゴク」

バッチーン!!

「ぐあ!!」

こんどのばかりはレイカも本気に近かった気がする・・・
うたれ強いマサトもつい声をあげてふっ飛んだ。
それにしてもマサトは人を動物にたとえるの好きだなぁ・・・

僕はついマサトの『アリジゴク』につい共感を少し覚え、
つい笑みがこぼれてしまった。すると・・・

パチーン!!

「アンタも何笑ってんのよ!!」

ふ、不覚だった・・・・
でもなぜかレイカのビンタはそれほど痛く感じられなかった。
声を出すほど痛いとは程遠い痛みだった。
でもとりあえずお決まりのセリフを言う。

「いったいなぁ・・・」
「うるさいわねえ、アンタがこんなくだらない事で笑うのが悪いのよ!」

くだらない事なら笑っていいじゃないか・・・・
もちろんこれは声には出さなかったが・・・

「け、夫婦喧嘩もいいかげんにしろよな・・・・」

ビンタでふっ飛んだまま道に座ってるマサトがボソッとつぶやく。
その声はもちろん僕達の耳には聞こえなかった。僕はともかくレイカに
聞こえてたらもう終わってた事まちがいないからだろう。

そうボソッとつぶやいてからマサトは立ち上がろうとして、前の方に無意識のうち
に視線をむけた。

「あ!!」

いきなりマサトは思わず声をあげた。
僕もレイカもマサトの視線の方を向く。

「あ!ヤバっ!」

僕達の視界に入ったのは、紛れもなく僕達に不快をもたらす2人の人物だった・・・



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